声優志望者の数
私が特別講師として教えた事がある、2年制の芸術系専門学校では1学年に、100人近い声優コースの学生がいました。
2学年合わせれば200人となりますが、1年生の基礎訓練期間で、30名くらい辞めてしまうので、実際には2学年合わせて130人くらいでした。(1番初めに辞めるのはたいていが、アニメオタクだそうです)
同じように声優コースがある専門学校や声優プロダクションの養成所は、首都圏だけでも20ヶ所以上あり、そこで学ぶ学生数を考えれば、首都圏だけでも、毎年1000人以上の声優の卵が生まれている計算です。
これに全国各地にある声優養成学校の卒業生数百人が加われば、2000人近くになります。
対して、仕事のニーズは、週一レギュラーを持つ声優でも、100人から200人でしょう。

その他、単発の仕事などがあっても、新人の場合はよくても月に2回程度の単発30分の仕事で、1回のギャラは、新人ランクの15000円ですから、奇跡的に仕事があっても、新人声優の月収は30,000円程度となります。
この場合の声優の仕事というのは、アニメーションのエキストラアフレコとか、外国映画のエキストラアフレコ、外国人のインタビュー吹き替え、ゲームナレーター、CMナレーションなどです。
私が知っている声優の何人かは、アニメキャラクターショーの司会をしていました。
ですが、これは連続して仕事が入るわけでは無く、いわゆる単発という部類の仕事です。
これらの仕事がある人が、月に500人程度で、後の声優数千人には仕事が全くありません。
ですから、新人の場合、他にウーバーとかのアルバイトをして生活しています。
側から見ると、ウーバーの人が時々、声優のバイトしているようです。
確率で考えてはNG
ここまで読んで、ほとんどの人がちょっと諦めモードに入ったかもしれません。
多くの人が声優志望の人に対して「やめた方がいいですよ」とか「食えないよ」とか言うのは、大体がこの数字を見て思う事です。
確かに、確率だけ考えれば、厳しいというか殆ど絶望的な数字です。

ライバル多すぎやでぇ
が、0%ではないのです。
では、どうやって多くの声優志望者の中から抜きん出るのか?
厳しいですが、方法はあります。
その前に、声優をキャスティングするプロデューサーやディレクターは、どうやって声優を探しているのか?
プロデューサーやディレクターが声優を探したい場合、いくつかの方法がありますが、大前提として、プロデューサーにもディレクターも、キャスティングで失敗したくありません。
下手な声優をキャスティングしたりすると、プロデューサーとして見る目がないとか、ディレクターとして才能が無いと言うようなレッテルを、すぐ貼られてしまいます。
ですから、キャスティングの難しい、超有名アイドルとか、アフレコ初挑戦の有名俳優とかでなければ、 プロデューサーやディレクターは、声を知っている声優、もしくは声優もやっている俳優をキャスティングします。
よほど冒険好きか、常に新しい才能と出逢いたいと思っているプロデューサーやディレクターでなければ、怖くて「全く知らない、声優をいきなりキャスティングはいたしません」し、実はそんなプロデューサーやディレクターはいません。
特に「洋画」の吹き替え声優に関しては、レギュラーを固定する傾向があります。

アーノルド・シュワルツ・ネッガーなら大塚明夫氏、
アラン・ドロンは故・野沢那智氏、
オードリー・ヘップバーンは池田昌子氏、
ジョニー・デップは平田弘明氏
実在する外国人俳優の声は、イメージをあまり変えないように、決まった声優さんが勤める事がほとんどです。
ですから、例は悪いですがレギュラーの声優さんが、お辞めになるとか、いなくなってしまったとかでなければ、他の声優、まして新人が入り込む隙はありません。
新人俳優を必要とする時
では、新人の声優さんが出るチャンスはどこにあるのか?
それはプロデューサーなりディレクターなりが、声で誰か分かってしまうような声優さんを避けたい場合です。
つまり、ドキュメントや旅番組に出てくる外国人の方の吹き替えとか、CMなどで無名性が必要な場合がひとつです。
或いは、大勢が出てくる場面や、新しいアニメキャラの声などです。
アニメや洋画で、主役ではない新しいキャラクターが、短いシーンに出てきた声が、野沢雅子さんの声だったり、石丸博也さんの声だったりすると、それはなんだか小さな役に対して声優さんの声が有名すぎてしまい、どれが重要な役なのかと視聴者が混乱してしまうのを防ぐために、極力、無名の声優さんにお願いする事があります。
次に歌が必要なアニメやドラマ、或いはCMなどの場合に歌が歌える(歌手並)の声優さんを探す事もあります。
或いは、ごく稀に「レギュラー声優が出演できなくなった時に、その声優に近い声を探したり、非常に太い声(低音バス)或いはキンキン声などの、特徴的な声を出せる声優さんを探すこともあります。
ただし、ベテランの声優さんになるとこの辺りの声は自在に出せる方が多いいので、よほど特徴的でないと難しいです。
では、どんな新人俳優が欲しいのか?
アニメでも映画やドラマの吹き替え、或いはナレーションでも、プロデューサーやディレクターは、新人の声優さんを探す時に声優プロダクションか俳優が所属する劇団に問い合わせをします。
その際、出来るだけ多くの声優や俳優が所属しているプロダクションに連絡をいれ、欲しい声をオーダーします。
所属人数が多ければ、こちらが求めるモノに近い人がいる確率が高いからです。
この時にプロデューサーとマネージャーの会話は「声の質や特徴」だけではなく「役柄」についての打ち合わせもします。
役柄は「元気な女子学生」とか「くたびれた中年のオヤジ」「ネクラの男子学生」「陽気な悪役プロレスラー」など様々ですが、台本上のキャラクターの説明をします。
これはプロデューサーが欲しいのは「声ではありません」
役柄を演じる事ができる声の演者なのです。

ここが肝心です。
我々プロデューサーが欲しいのは、あくまでも「演者」「役者」としての「声優」です。
「声優」と言う言葉が誤解を招きやすいのですが、現場が欲しいのはあくまでも「演技ができる人」です。
演技ができるとは、全身での表現を声を通して演じることです。
観念やイメージだけを声に乗せるのではなく、人間の持つ普遍的な感情が表現されている声が欲しいのです。
クラスで物が無くなり、それを盗んだ疑いをかけられた少年の「やってません」を表現するのに、
我々が欲しいのは
「疑われて悔しい」
「だけどこのままだったら自分はどうなってしまうのだろう」
「信頼していた友人のAくんも疑っている」
「先生はいくら言っても疑った目を向けてくる」
「ああどうしたらいいんだ」
「本当にぼくじゃないんだ!」
あまり例がよくありませんが、上の状態の全てをひとつの言葉で表現する
「僕じゃない!」
が欲しいのです。
これはいくら声を出すだけの練習をしてもダメです。
あなたの中の記憶、それも心の記憶、感情の記憶を呼び起こし、自在に表現できなければなりません。
そして最低限「ドラマが始まってから、エンディングまで」気持ち、演技を持続でき、ドラマ全体で生きる事ができる声優(俳優)です。
つまり集中力が切れない俳優をキャスティングします。
オーディションをしても、いい声を出せばいいと思っている新人が大勢います。
我々が探しているのは「澱みなく、それっぽい声を出す人」や「ただ流暢にしゃべる人」ではありません。
少なくとも「声優」と名乗る以上は演技力が必要です。
新人の場合、この演技力が勝負の分かれ目になります。
具体的な探し方
プロデューサーが無名の声優を探す場合、まず、知り合いのマネージャーがいれば、そこへ連絡して相談をします。
「どんな役で、どんな声の人が欲しいのか、キャリアはどれくらいの人がいいのか」などです。
実はその時、声優事務所より劇団の俳優で声の仕事をしてくれる人を探す場合が多いいです。
俳優の事務所も最近では「声の仕事」を重要に考えています。
それは、テレビドラマなどで必要な俳優の人数が少なくなってきていることもあります。
かつては「居並び大名」と呼んだ「将軍」役の俳優を中心に、大座敷に勢揃いするお城の侍が50人いたのが、最近では20人になって、同時に衣装さん、床山さんの仕事も減ってきたとか「人気若手俳優を中心にしたトレンディードラマ」が中心になったとか、それもどうかすると8話、9話で終わってしまう。
そう言った事情もあり、近年、俳優のプロダクションや劇団が積極的に声優の仕事をしています。
と同時に、製作側も映画やドラマの吹き替えの場合には、演技基礎がしっかりと出来ている俳優さんにお願いするのが安心です。
中でも舞台俳優さんの信頼は厚いです。

NHKの海外ドラマの声の出演など見ると、文学座や青年座、テアトル・エコーなどの劇団の俳優さんが重要な役を演じています。
現在、活躍しているレジェンドと呼ばれる声優さんも、殆どが舞台俳優の経験があります。
さらに、近年の若手声優が「タレント化」し、声優の仕事というよりタレント的なポジションでの活動が多く、俳優としての「声優」とはややかけ離れて来ています。
宮崎アニメでも、俳優が多く使われています。
比率的には圧倒的に人数が多い声優より、声の仕事を依頼される俳優の数が、番組によっては多いい状況です。
勿論、大手声優プロダクションにはその良さが沢山あります。
絶対的なのが、仕事の依頼数は小さなプロダクションに比べ、比較にならないほ多くあります。
知り合いに声優マネージャーがいない場合は、なるべく人数が多くいるプロダクションに電話をします。
それは確率的に、探しているキャラクターが見つかる可能性が高いからです。
プロダクションによっては、研究機関がありプロになった後でも、しっかりと声優としての訓練ができる所もあります。
声優(俳優)も常に、バージョンアップが必要です。
大手にはそれを可能にしてくれる方法がいろいろ用意されています。
新人の声優は、頑張って出来るだけ大きなプロダクションにお世話になるか、その要請機関に入って勉強する事が、声優になる近道かと思います。
もう一つは、あくまでも俳優を目指し、劇団で活動をしながら、ドラマの声優の仕事をすることも可能です。
文学座や青年座、劇団昴など所属の多くの俳優が海外ドラマの吹き替えをしたり、また、伝統的に
劇団テアトル・エコーはアニメの声優を多く輩出しています。
ですから、若手でデビューを待つには競争も激しいでしょうが、仕事の依頼は小さな事務所が10だとすると、大手事務所は100から200の依頼があります。
スタートはどこから
スタートは専門学校からでも、劇団の養成所でも、あるいは大手声優プロダクションの養成所でもどこでも同じですが、その特徴を挙げると。
専門学校
専門学校は、圧倒的に授業数が多くあります。
ただし、どこも同じでしょうが、最初は「台本を持って、映像に声を合わせる」ようなことはしません。
「声優」という名称が誤解を生みやすいのですが、あくまでも俳優を育てるのがメインですので、基礎訓練である「発声」「滑舌」「演技実習」場合によっては「リズム」「ダンス」などがあります。
ここで大半が辞めてしまうようですが、何度も言いますが、声優とは俳優です。
学校によっては、在学中にオーディションが受けられる所もありますが、焦ることはありません、じっくりと自分を鍛える時間として過ごしてください。
基本的には1人でも多く、プロになって欲しいので指導は丁寧です。
学費は他の機関の比べて高いです
声優プロダクション養成所
声優プロダクションが併設する、養成所です。
即戦力養成が主眼ですので、一定期間が過ぎて、モノになりそうもなければ審査の上、退所させられる厳しさがあります。
学費は専門学校ほど高くはありませんが、授業数などは少ないでが、基礎で学ことは専門学校などと同じで「発声」「滑舌」「演技実習」などです。
所属する声優が指導にあたる事もあり、仕事の無い声優の救済という側面も否定できません。
俳優養成所
声優というより、俳優養成を主眼とした機関です。
大体が劇団や専門学校が運営しています。
実は劇団の養成所出身という声優が非常に多くいます。
ちなみに「大塚明夫氏」は、私がいた「劇団こまつ座」の若手に所属したいましたし、それ以前は文学座の養成所で勉強していました。
ですから「声優」デビューの時には、俳優としての基礎が充分出来ていたのです。
前にも書いたように現場は「アフレコ」ができる俳優を必要としているからです。
まず、俳優の修行をしてから「声優のオーディション」を受けたり
「声優プロダクションのオーディション」を受けるのも近道かもしれません。
できれば「声優」の仕事をしている俳優が所属する劇団の養成所がいいと思われます。
独り言
昔、舞台出演者のオーディションをやった時に、声優専門の女優さんが受けに来ました。
実技審査で、セリフを読んでもらったのですが、審査員全員がのけぞりました!

頑張りま〜すぅ
舞台設定は明治時代の、農村の村娘だったのですが、その人のセリフが
「甲高い、アニメのキャラクター声」つまり「完全に役から離れた作り声」でした。
「NHKのぬいぐるみの声のような、少し舌足らずな甘え声のような」
演出家が何度も地声を聞かせてください。
そうお願いしても「はい、わかりました」という返事がアニメ声です。
これでは実際の舞台上で、他の俳優たちとの共演は無理だし、大体、演技以前の問題でした。
以来、この演出家は「二度と声優専門の人はオーディションに呼ばないで欲しい」と言われてしまいました。
現場では「アフレコ」もやっている「俳優」はキャスティングしますが「演技」をした事がない人は
「声優≠俳優」と考えられています。
そして実際のアフレコ現場でも欲しい人材は「俳優=声優」なのです。

残念です
昔、昔、お前の声は「間抜け声だから、いい味してる」と言われた事があります。
「間抜け声」って‥その時、その人は私の顔そじーっと見てから言いました。
それって「○○顔?」