実はケースバイケースのギャラ
ひと口に「舞台出演料」と言っても、公演の規模や入場料金、そして俳優自身の知名度、キャリアによって変わってきます。
例えば、、客席数1,800の帝国劇場と、客席数418席の新宿・紀伊國屋ホールとでは、1ステージの総収入が違います。大雑把に言って1回あたり20,000,000円入ってくる帝国劇場と、3,000,000円の紀伊國屋ホールでは、当然、帝国劇場に出演した方が高いギャラを貰えると考えます。
が、が、そう簡単ではないのがこの舞台の世界です。
プロデューサーはこれに総ステージ数、たとえば帝国劇場で30回公演なのか40回公演なのか、紀伊國屋ホールでは20回公演でその後、全国公演が50回あるのか?
あるいは出演者は全員で10人なのか、100人も出るのか?
演目は現代劇で衣装は洋服なのか、それとも着物の時代劇か、特殊なコスチュームが必要なシェイクスピア劇なのかで、衣装の費用が全然違います。
音楽にしても、録音したものを出せばいいのか、オーケストラが必要なミュージカルなのか?
スポンサーは付くのか?

だめだ、女中は浴衣にしてもらえないかなぁ‥
文化庁からの助成金はもらえるのか?さらには、観客動員が見込めそうな、スター俳優が出演するのか?
などなど、それらを全部、全部、全部、ぜえ〜んぶ、考えて計算に入れなければなりません。
私のブログ記事の「俳優の舞台出演料、2000人にギャラを払ったプロデューサーが語る」に、モデルケースの舞台出演料を書いています。
基本的な考え方は変わらないのですが、上記の様々な要素を加味して、出演料を算出します。
そうは言っても、例えば帝国劇場で1ステージ50,000円の出演料を貰っている俳優が、紀伊國屋ホールでの入場料金が半分の7,500円で、客席数が4分の1だからといって、1ステージ10,000円という事にはなりません。
相場感で言うと、30,000円はお支払いします。
入場料が少なくて、客席数も少ないのに一体どうすの?
そんなに払ったら、大赤字になっちゃうじゃん!
その通り! 何にも考えずにやったら、公演は赤字です。
ですからここに、プロデューサーという芸術を経済的に管理する人間が必要になってきます。
芸術を理解しつつ、どこか「商人(あきんど)」的なものの考え方をするのが、プロデューサーです。
そのバランスの中で俳優の出演料が決まっていくのです。
禁断の情報収集・言っちゃいけない、聞いちゃいけない‥お話
あまり公にはできませんが、プロデューサー同士のゆるいネットワークがあります。
というかプロデューサーのお友達たちです。
集まったり電話したりして、大抵は上司の愚痴を言ったり、劇団の悪口を言ったり‥
でも、あの俳優は良かったとか、あの俳優のファンクラブは切符いっぱい買ってくれるよ、とか、広島公演の楽屋係の女性が可愛かったとか‥○○プロダクションの××マネージャーやうるさい、などなど
様々な情報というか、豆知識を伝え合っています。
これは、演劇界でも職種が近いプロデューサー達のネットワークです。
私の場合は、プロデュース・システムでの公演、すなわち、作品ごとに演出家やプランナー、俳優を集めて(プロデュースして)公演をするスタイルのプロデューサー達でしたので、お仲間も俳優を持っている劇団のプロデューサーではなく、同じようにプロデュース公演をする会社のプロデューサーが多かったです。
その中で、一番重要で、一番話している事を知られてはいけない情報が、俳優のギャラとキャスティングするにあたっての注意事項です。
「あの女優、1ステージ幾ら?」
「あそこのマネージャー、ギャラふっかけてこない?」
「あの役者、性格悪いって聞いたけど、実際どうなの?」
「○○って、女優の○田○美と、訳ありだったから、お互いの事務所が共演NGなんだって。」
そんな、週刊文春だったらほっとかないような、極秘情報のやり取りがある事もあります。
ちなみに、同じプロデュース公演のプロデューサーでも、絶対に口を割らない人もいます。
とっても正しくて、いい人ですが「けっ!頭固い奴」と思っていました。
その正しい人‥もう、この業界にいません。

で、プロデューサーの何人かが、ほんの何人かがこのように繋がっています。
それだけではありません。
実は、マネージャーさん達はマネージャーさん達で繋がっています。もっというと、スタッフもスタッフ同士で情報交換して、中島プロデューサーが幾ら払うか知っています。
それを乗り越えての、ギャラ交渉ですから、実にやりずらい世界です。
簡単な計算方法
では、実際に予算とはどのような計算をしているのか、若干、若干の手の内をお見せいたします。
まず、入場料収入を計算します。
今回は「プロデューサーズ」というタイトルの公演で、栄光座という架空の劇団が公演を企画したとします。
劇場は新国立劇場中劇場を借りての公演を考えています。
総客席数=980席とします。
入場料はS席7,500円✖️500席=3,750,000円
A席5,000円✖️300席=1,500,000円
B席3,000円✖️180席= 540,000円
小計 5,790,000円
大雑把に言って、これが1回公演あたり100%の興行収入と考えます。
それで、例えば20回公演を考えると、980席の20回ですから、全部で19,600席になります。
もし、全部チケットが売れたら‥11,580,000円となります!
ですが、これはまあ、絵に描いた餅でして、100%の入場料というのは実際にはありません。
あるとすれば、客席数を無視して‥消防法を無視って、お客を詰め込めばできますけど‥
「誰がやったんじゃい!」
「さあ、多分プロデューサーだと思います」と全員が言います。
そして、プロデューサーだけが「お縄ちょうだい」ということになります。
ですから、100%興収は考えはいけません。

「プロデューサーはおみゃあだな、ああん?」
って、お縄になります。
真面目にやれば、必ず、招待券や10%、20%割引の営業先や団体がありますし、舞台装置のプランが出てきた時に、舞台が見にくいとか見えない席とかが出てきますし、何より売れ残ってしまうこともあります。
実際にプロデューサーは、まあ、作品の内容なキャスティングにもよりますが、大雑把に70%程度の収入予算で計算を立てます。
※勿論、もっと低く65%くらいで予算を作る、プロデューサーもいます。
今回は全て仮定ですので、70%、81,060,000円としておきます、約8000万円の収入です。
で、これ全部使ってしまったら、劇団や会社の収入がありません。
会社の経費は1ヶ月にかかる人件費やその他経費が、ほぼ決まっていますので、それをここから抜きます。
会社にもよりますが、例えば従業員8名程度の会社で、人件費とか光熱水料とかなんだかんだ、1ヶ月500万円かかるとしますと、稽古から本番終了までの3ヶ月分の会社経費を引きます。
ですから8,000万円から会社経費3ヶ月分の1,500万円を引いて、6,500万円で作品を作らなければなりません。
で、次に何をやるかというと、このお金を予算項目に振り分けます。
予算項目は以下の通りです
1、文芸費=脚本料、翻訳料、演出料、作曲料、照明、音響、衣装などの各デザイナー(プランナー)、指導料(方言、殺陣、歌唱など)
2、舞台出演料=俳優費
3、舞台陽=大道具、小道具、特殊小道具、衣装、照明機材費、音響機材費など舞台にかかる費用

で、最後は演出家や美術家から「ケチ」とか、あろうことか「強欲」なんて言われます。
4、劇場費=上演する劇場の賃料+機材レンタル費
5、舞台人件費=舞台監督、演出部、照明スタッフ、音響スタッフ、衣装スタッフ、など
6、稽古場レンタル費
7、宣伝費=ポスター、チラシの宣伝材料費、ホームページ作成費、
8、販売関連費=ぴあ、イープラス、ローソン、カンフェティなどの手数料など
9、制作費=台本印刷、制作雑費(打ち合わせ費、交通費など)
10、予備費
私、現場を離れて5年経ってますが、この項目を見るといまだに「ウーッ、苦、苦、苦しいぃぃぃ!」
となります。
できれば見たくないのがこの予算項目です。考えても見てください。
これほどまでの項目にたった6,500万円を当てるです。
無理矢理、以外何ものでもありません。
プロデューサーは、泣きながら予算を作ります
予算作成の第1段階。
予算書は何度も何度も修正していきます。
最初の本当に一番最初の作業をお話します。
文芸費
ここは全体予算の10%程度を最初に置きます。
正直、ここが10%を超えると、結構厳しいのです。
でも、海外のミュージカルとかになりますと、作曲料、脚本料が入場料の8%とか10%とか無茶なこと言ってきますので、それだけで予算が全部飛んでいきます。
今回はストレートプレイを想定して、10%の6,500,000円を計上しておきます。
舞台出演料
ここは本当に面倒です。
出演者の人数や、ランクによって舞台出演料総額は変わるのですが、まあとりあえず20%の予算をおきます。
この項目の限界点が全体の40%です。
勿論、その時にはこれ以外の項目(文芸費、舞台費など)は全体に下げることになります‥
ですからなんとしても‥総予算の20%の13,000,000円をガチで死守です。
舞台費
ここもお金を掛けようと思えば、いくらでもかかってしまいますが、ここも20%の予算を計上します。13,000,000円ですね。
大体、すげえ舞台装置のプランなんか見せられると、卒倒しそうになります。

劇場費
仮に新国立劇場を借りようとすれば、10,000,000円です。
高いっちゃた高いですが、舞台機構の人件費とか基本機材とはその中に入ってますし、場内のアテンド要員も入ってます。
客席数とブランド名を考えれば安いです。
はい、私、貸し付ける部の部長してました。
「おおきに」
舞台人件費
ここも舞台の転換などがどれくらい必要なのかで、ずいぶん変わりますが、基本的には
舞台監督1名 演出部7名 照明スタッフ4名 音響スタッフ1名、衣装1名、床山1名の編成と計算して、総予算の15%を計上しておきます。
9,750,000円になります。
稽古場レンタル費
これは稽古場を1ヶ月レンタルするお金です。
稽古場は大体1日50,000円ほどかかりますので、30日で1,500,000円となります。
都内はこの稽古場が本当に少なく、毎回争奪戦になってます。
私、昔は台東区森下にあった「ベニサンスタジオ」を借りてました。
そこは稽古場が沢山あって、ちょっとした芸能人村みたいな感じでした。
最近は、新宿村スタジオとかでしょうか?
宣伝費
これも結構大変で、ポスターのデザイン料が1,000,000円、印刷がポスター1000枚、チラシ5万枚ほどで、何色刷りかにもよりますが200万円ほど必要となります。
ホームページも安くお願いしても2,000,000円ほどです、ですからこの宣伝費には5,000,000円の計上です。
販売関連費
これは販売してもらうチケットも枚数で変わりますが、おおよそチケットの15%ほど考えますので、
仮に1枚7,500円のチケットを2,000枚販売してもらうとすると、
7,500円✖️2,000枚✖️15%=2,250,000円となります。
制作費
台本印刷はさほどかかりません、200冊ほど刷って300,000円程度です。
雑費は、打ち合わせ時の喫茶代とか、なんだかんだと制作部員の活動費ですが、500,000円程度です。 合わせて800,000円ほど計上しておきます。
予備費
ようやくここに辿り着きましたが、ここは残念ながらここまでの9の項目を計上してみて、余ったお金を計上しておきます。
ここまでに61,800,000円の計上ですから、残りは今回3,200,000円です。
やったあ、予算が出来上がったぁ!
はっきり申し上げて、こんな感じで予算が執行できれば天国ですが、滅多にいきません、ていうか、絶対に行きません。
で、これからひとつ一つの項目でじっくり吟味検討し、数字を落ち着かせていきます。
しかし、今回は舞台出演料に限っての記事ですので、俳優のギャラに特化して進めていきます。
俳優のギャラ計算
さて、その次にプロデューサーは、10の項目のそれぞれを、吟味し検討し、気を失いそうになったり、投げ出したくなったりしながら何度も何度も予算書を書くのです。
今回は俳優の部に関しての考え方を、書いてみたいと思います。
暫定的に俳優費を全体の20%、13,000,000円としました。
私の経験上、この数字で収まることは滅多にありませんが‥第1次予算案としてはこの数字を置いておきます。
作品にもよりますが、仮に10人の俳優が必要な作品ですと、ベテランが何人必要だとか、若い俳優で大丈夫な役はどれか。
あるいは予算が少ないので、ギャラの安い若い俳優に年寄りの役をやってもらおうとか、色々と考えてキャスティングをしていきます。
そうして、考えた俳優の事務所との出演交渉が終わり、キャストが決まるとトップの俳優から、次のランク、その次のランクを数字を仮に置いていきます。
今、仮に1ヶ月の稽古で本番は新国立劇場中劇場で20回公演と想定しますと、以下のような数字が想定できます。
主役級= 5,000,000円✖️1名 5,000,000円
準主役= 3,000,000円✖️2名 6,000,000円
ベテラン= 2,500,000円✖️2名 5,000,000円
中堅俳優= 1,500,000円✖️2名 3,000,000円
若手俳優= 1,000,000円✖️2名 2,000,000円
新人俳優= 500,000円✖️1名 500,000円
出演料合計=21,500,000円となりまして‥予算を8,500,000円ほどオーバーです。

予備費を3,000,000円ほど回したとして、予算が16,000,000円
まだ、5,500,000円のオーバーです。
それに予備費が残り200,000円になってしまいました。
ここから他の文芸費や舞台費などから回せないかを検討しながら、ギャラを再度検討します。
主役級= 5,000,000円✖️1名 5,000,000円(1次) =4,500,000円(修正) 1人・4,500,000円
準主役= 3,000,000円✖️2名 6,000,000円(1次) =5,400,000円(修正) 1人・2,700,000円
ベテラン= 2,500,000円✖️2名 5,000,000円(1次) =4,200,000円(修正) 1人・2,100,000円
中堅俳優= 1,500,000円✖️2名 3,000,000円(1次) =26,000,000円(修正)1人・1,300,000円
若手俳優= 1,000,000円✖️2名 2,000,000円(1次) =1,600,000円 (修正) 1人・800,000円
新人俳優= 500,000円✖️1名 500,000円 (1次) = 450,000円(修正) 1人 4,50,000円
と修正予算の合計が 18,750,000円となります。
修正した額と、1人幾らになるかを上の表に表しました。
予備費から3,000,000円回して、予算が16,000,000円にしましたが、まだ△2,750,000円です。
俳優の数が10人で、合計187,500,000円ですから、1人平均15%ダウンで、後2,812,500円減らせますから、予算案には到達です。
ですが、そう簡単ではありません。
パソコン上で勝手に数字を減らすのは簡単ですが、実際にはこの数字にするには俳優の事務所のマネージャーとやりあわねばなりません、やり合うと言っても、喧嘩をするわけではなく、あくまでもこちらは「お願い」をするんですが‥
そして、俳優個人の生活だってありますし、マネージャーだって1円でも多くもらいたいと、必死になってやってきます。
不思議に思われるかもしれませんが、舞台の場合、出演料は出演が決まった後にお話をする例が多いのです、まあ、相場を知っていると言うのもありますが、10人いると2人くらいが、出演交渉の時に出演料を聞いてきますが、大抵は稽古が始まる頃に「ギャラ交渉」が行われます。
俳優マネージャーとのギャラ交渉
現在、予算オーバーとはいえ、例えば新人俳優のギャラを現在の修正の450,000円から15%カットすると、382,500円になります。
約2ヶ月の拘束ですから、1ヶ月にすると191,250円です、新人と言っても、まあ30歳くらいの俳優だとすれば、ギリギリかと思います。
しかも俳優の場合、稽古場や劇場に通う交通費も自腹ですし、このギャラから税金など払うので、ひょっとしたらギリギリを超えてしまっているかもしれません。
それは、ちょっとできません。
次にプロデューサーは何をするかというと、文芸費、舞台費、舞台人経費などの他の項目から、少しでも捻出できないかと検討します。
演出部員を7人体制のところ、6人にできないか?とか、あるいは稽古の最終まで6人で、本番になったらそこから1人追加して7人体制にするのはどうか?とか、
あるいは舞台美術プランナーに、大道具予算が少ないので、なるべくお金がかからない舞台装置を考えてほしい旨、丁寧にお願いし、さらに大道具制作会社にも根回しをして、大道具全体予算をあらかじめ提示しておく。
が、これもなかなか理想通りいかず、演出家から「いい物を作るにはお金がかかるんだよ」などと言われ、それでも「いやあ、本当にないんですよ予算が‥」と、のらりくらり言って、みんなから「ケチプロデューサー」「強欲商人(ごうよくあきんど)」とか言われて、本当に側から見るより辛いんですよ、プロデューサーは‥

時には大声で泣きます。
私の尊敬する故・本田延三郎という劇団五月舎の大プロデューサーは、最初の舞台美術ミーティングの際、舞台監督の「大道具予算はいくらですか?」と言う問いに、
「はい、できればゼロ、0円で‥」と答えたと言う、笑えない都市伝説が残っていますが、プロデューサーとしては、痛いほどよくわかります。
まあ、そんなこんなで舞台費や人件費、衣装費‥これなどは、衣装プランナーに「少しでいいから、ユニクロで買ったので使えない?」と聞いてヒンシュク買ったりしてます。
それで少しでも他から「つまんで」(減額して)、俳優のギャラにちょっとだけ上乗せして、交渉になるのですが、基本的な姿勢として、不必要に安く叩こうとか、値切ろうなどと考えてはいけません。
あくまでも一つの作品を作る仲間、同志として俳優さんなりマネージャーさんなりと接しなければなりません。
その精神の上で、多くのスタッフ、多くの俳優、そして観客の方に満足いく作品を作るため、プロデューサーは調整役として存在しているとすれば、マネージャーとのギャラ交渉も決して「戰い」でもなければ「騙し合い」でもありません。
今回の例で考えると、なんとか俳優費を全体から15%落とさなければなりません。
各セクション、ギリギリ‥たとえば、プランナーが考える理想の舞台装置、理想の照明、理想の音楽、そして俳優であれば自分にとっての理想の舞台であり、理想の演技を追求する自分であり、その実現です。
プロデューサーはそれぞれの俳優やスタッフの理想を聞き、その実現を経済的に支えるのが仕事です。
そして、それを実現させなければなりません。
それが15%予算カットしなければ実現し無いのです。
逆に言うと、15%カットさえすれば実現します。
でもそれは、みんなの理想を15%ダウンさせる、妥協させることかもしれません。
プロデューサーは全員の理想を理解しています。
と言うことを作り手である、作家や演出家、デザイナー、そして俳優や舞台スタッフたちに分かってもらうことが大事です。
最後はそれがものを言います。
芸術家の理想は理解した、頑張ってそれを実現して欲しいし、私もできる限りのことはします。
「ただ、申し訳ない、私の力不足で予算がこれしかない、でも、一緒にいい舞台を作りたい。
今回はなんとかこれで納得してもらえないだろうか?」

俳優のマネージャーにも「この作品を一緒に作って、是非、是非、新しい俳優さんの魅力を作っていきましょう」とか
「この役をやっていただいて、飛躍してください! ウチの劇団の舞台は山田洋次監督もいらっしゃいます」
ギャラ以外の付加価値がどれほどあるかを「熱弁」し、ある時はその自分の熱弁に自分が感動して、思わず泣いたりして見せて、プロデューサーは頑張るんです。
ここから先は、実際の稽古が始まって、それぞれとのうち合わせが行われ、最後の最後は大道具製作会社や小道具レンタル会社、衣装レンタル会社などに泣きついて、ちょっとおまけしてもらったり、プロデューサーは片方で切符を売りながら、片方で稽古場やプランナー、そして製作会社の間を駆けずり回って、終始のバランスを取っていきます。
ですから、芝居の出来もさることながら、公演が予算内に収まった時、一瞬幸福になります。
そして、すぐ、次の予算案作成に入るのです。
最後に
私が手掛けた舞台で、俳優が総勢40人出演する作品がありました。
それは総予算1億円で、俳優費は3800万円、時代劇でどんな若い俳優でも、着物とカツラが必要でした。
しかも収益は1500万円でした。
それで4ヶ月です。
完全にアウトです。
そんな時、プロデューサーはどうするかというと、もう1作品、収益が5000万円ほど出る作品を同時に製作し、上演しました。
劇団員たちから「俺らを殺す気か!」と‥まあ、本気ではないお叱りを受けました。
でも、そうやって色々工夫したり、叱られたりしながら、全体の予算の20%で俳優の出演料を捻出するべく、文字通り死闘の日々でした。
勿論、ここに書かれているのは、現場での予算管理、執行などのほんのわずかな内容ですが、それでもプロデューサーって結構、過酷な商売ということをお知らせしたかったのです。
だってね、お金扱ってるだけで、大体、悪徳プロデューサーとか言われてしまうので、はっきり言って、そんな人いませんよ。
まあ、4人位いましたけど‥
中島豊
1本芝居が終わると、疲れ果てて、どこでも寝てしまします。
そして、公演が大赤字で、実家が、競売にかけられ、お袋が泣いている夢で起きます。
‥嫌でしょう‥
