舞台オーディションは、俳優にとっては、またとない修練の場であります。
特に若い俳優にとってのオーディション目的は、審査に合格し舞台出演するという事でしょう。
それはそれで大変喜ばしいことですが、そんな、近視眼的な目標を実現することだけで、オーディションを受けるのは、あまりにもったいないです。
オーディションは本番の舞台を踏むのと同じ効果があります。
名優と言われている俳優たちも、何度も何度もオーディションに落ちて、その挫折を経て俳優として大きく花開いた人ばかりです。
オーディションを単なる審査会とだけとらえず、またとない修練の場として考えてみた時、最高の演出家、最高の劇作家、最高のプロデューサー達の目にあなたを焼き付けるチャンスであり、あなたにとってはいつか踏む大舞台への布石です。
本番に立つための、大いなる稽古の場として、是非オーディションを利用してみてください。
オーディションは、ほとんどの人が不合格になります。
正々堂々と受け、正々堂々と落ちる、この落ちる数があなたの俳優としての精神を鍛え、技術的なスキルアップにもつながります。
関連の記事もよかったら読んでみてください。
キャスティング・オーディションとタレント・オーディション
オーディションと言っても、大まかにいって2種類あります。
ひとつはキャストオーディション、もうひとつがタレントオーディションです。
キャスティングオーディションとは、上演する作品が決まっていて、その出演者を選ぶためのものです。
一般的にオーディションと言われるものは、大体このキャスティングオーディションです。
この辺りのオーディションに関しては、別項目の
これをお読みいただけましたら、幸いです。
それに対し、タレントオーディションは、劇団や俳優プロダクションが新しい才能を見つけようとして行うオーディションになります。
俳優の養成施設などが行うオーディションもそのひとつです。
キャスティングオーディションの場合、例えば「孫悟空」の八戒(ブタの妖怪)を探すオーディションに、すらっとした二枚目が応募してきても落ちますし、逆に「孫悟空」の役を探している時に、メチャクチャおデブさんがきても落ちます。
だったら、そう言うオーディションは受けなければいいのか?
それは、単に合格か不合格かだけを考えればそうですが、俳優のオーディションは入学試験と違います。
たとえ、オーディションに落ちても、審査員のプロデューサーや演出家は貴方を見ていて、よければ「何かこの俳優に合う役はないか?」とか「次回作の○○の役に、この俳優をキャスティングしてみよう」となります。
タレントオーディションの場合、審査員が見るのは、貴方の可能性です。
その可能性の中には「人物としての品位」「礼儀作法」が大前提にあります。
映画でもテレビでも舞台でも、大勢の人間が集まって一つの作品に向かって行きます。
その時に大事なのは「礼儀作法」と「品位」です。
審査員は最低限それが出来ているかを見てから、パフォーマンスの審査に入ります。
時々、挨拶もろくにできず、化粧前も隣の俳優の場所まで、靴や衣装がはみ出ていたり、食べ物をそのまま放置していたりの若い俳優がいますが、二度とキャスティングされません。
プロデューサーがそんな俳優をキャスティングすると、プロデューサーの目が疑われ、演出家や共演者からクレームが来ます。
応募書類の書き方
オーディションに応募するには、まず、決まった応募書類があればそれを手に入れます。
そういったものがなければ、自分で指定された書類を作成して、応募する事になります。
募集する団体によって、多少の違いはありますが、通常、次のようなモノを用意する必要があります。
履歴書
これは指定のものがなければ、市販のものでいいと思いますし、自前で作っても大丈夫です。
大手プロダクションに所属している俳優なら、そこで用意されたものがあると思いますので、それでいいと思います。

これは普通に、ごく普通にしっかりと書き上げたモノを作ってください。
こんなところで、誤字脱字なんか書いていてはダメです。
ここは、しっかりと綺麗な字とは言いませんが、丁寧な字で書く必要があります。
特技の欄は、歌とかダンスとか或いは舞台上で使えるような、空中回転とか空中浮遊とかを書いてもいいですが、ちょっと歌が上手とか、ダンスが好きで家で踊っている、或いは空中浮遊という胡座(あぐら)ジャンプレベルではいけません。
ここは、舞台上で披露できるレベルが求められます。
面接で「どのくらい出来ますか?」と聞かれ、即興でタップを踏むレベルが、最低でも登美丘高校レベルは必要です。
時々、出来ないのに「出来ます!」とか言って、やってもらうと‥「ガクッ」
これは減点になります。
ダンサーのオーディションでなければ、面接で聞かれた時には「ダンスできません」と正直に言って方が好感が持たれます。
ですから、この特技の欄は正直に書いてください。
或いは「ダンス歴 半年」とか、少し詳しく書いてください。
ダンサー募集となっていたら、このオーディションは諦めてください。
写真
通常はバストアップと全身の二点必要となります。
大事なのは、しっかり正面を向いた写真を用意してください。
応募書類が1000通くらい届くと、必ず背景が「垣根の前」とか「海辺」とかの写真が来ます。
審査員は「オーディションを舐めてる」としか思いません。
審査員が欲しいのは、ブロマイドではありません。
この俳優はカツラが見合うかな?とかどんなメイクが生きるかな?とかを見極めたいのです。
写真はあなたという俳優の商品カタログです。
笑顔は構いません。

貴方のオーディションに対する姿勢を表すと思って、ちゃんとした写真をつけてください。
そして忘れてはいけないのは、必ず写真の裏にフルネームを書いてください。
滅多にありませんが、時々、写真が落ちたりすることがあったり、何気なく写真の裏を見た時に名前が書いてあると、好感が持てます。
写真に関しては以上の事をしっかり守って、書類を出してください。
芸歴書
履歴書とは別に、芸歴書の提出を求めるオーディションがあります。
この時に審査員が見たいのは、作品名、役名もさることながら、演出家と共演者です。
あまりキャリアの無い俳優が、学園祭の演目など書いてくることがありますが、これはかえってマイナスです。
何も書くことが無いのに、自分を大きく見せようと、学園祭で主役やりました‥的なことは、かえって印象悪くなります。
アマチュアで書いていいのはせいぜい、演劇学校の卒業公演がギリですが、必ず演出家の名前を入れてください。
プロダクション所属の俳優は、一緒にDVDとかUSBメモリなどを送ってくることがありますが、はっきり言って審査前に見ることはありません。
応募者が合否のボーダーになった時、参考程度に見る程度です。
どの映画会社もテレビ局、演劇制作会社の制作部の本棚には詰め込まれた、DVD,USBが溢れています。
演技審査
書類審査を通過しますと、いよいよ実技審査に進みます。
実技審査は演技、リズム感、歌唱、面接というのが一般的です。
歌唱は作品で必要がなければありません。

これはキャストオーディションか、はたまたタレントオーディションかで若干内容は変わります。
タレントオーディションでは歌唱はあるものと思ってください。
演技審査は当日、若しくは少し前にセリフが渡されます。
当日の場合は、渡されてから10分ほど時間を与えられ、その後、審査員の前にセリフを読むことになります。
ここで審査員が見るのは、最初に声の質です。
実際の舞台で出す声を想定して、しっかりと声を出してください。
注意すべきは「大声」「怒鳴り声」ではありません。
しっかり、発声が出来ているか?
そして、全体の立ち姿、体の鍛え方を同時に見ています。
鎧甲冑を着せて様になるか? 猫背や身体に変な癖がないか?
そういうチェックをしながら、一番のポイントはセリフに複雑な感情が織り込めているか?
これはかなり難しいのですが、例えば「四谷怪談」というお芝居の「お岩」のセリフを与えられたとします。

「恨めしや、伊右衛門殿〜、共に地獄へ誘引せん‥」
愛する夫の伊右衛門に裏切られ、毒を盛られた「お岩」が、幽霊となって出てくる場面です。
この時に審査員が注目するのは、そのような感情を交えたセリフを言うか?
と言う事です。
感性の乏しい、あるいは素人俳優は「恨めしい、恨めしい、怖いぞぉ、怖いぞぉ」と言う一色の演技をします。
ちょっとできる俳優は
「こんなにアナタを愛しているのに、それなのに、悲しい、辛い、ああっ!恨めしや〜」
もう少しできる俳優は「哀しい、辛い、やるせない、辛い、なぜ、まだアナタを愛している! 離れない、一緒に地獄へ」と言う感情を入れた演技をします。
まあ、これできる俳優はプロでも少ないですが‥。
ですから、こう言う表現ができたら、一発合格してしまいます。
日頃から2つ、3つの感情を、ひとつの演技で表現できる訓練をしてください。
一番のおすすめは、名優の演技を見る事です。
ダンス・歌唱
ミュージカルや劇中の重要な場面での歌唱がある場合、ダンスと歌唱の審査があります。

ダンスは残念ながら、一朝一夕では無理です。
歌唱も同じですが、まあ、これは生まれながらに才能がある人には勝てません。
歌唱指導に通うのもいいかもしれませんが、俳優として舞台に立って歌をうたうのと、歌手としてうたうのでは全く異なります。
時々、歌が上手い俳優や声のいい俳優が陥るのが、演じている役から離れて、歌のみに神経が行って、ともすると歌に酔って演技と歌が遊離してしまう俳優がいます。
歌といっても俳優の場合は、演技と同じ次元で歌わなければなりません。
そことしっかりと押さえ、セリフと同じ感情で歌えるかどうかが課題です。
具体的どうすればいいの?
セリフが多少の抑揚がついたと思ってください。
面接審査
ここは、おそらく志望動機とか、今までどんな舞台を見たのか?とか、尊敬する俳優は誰か?とか通り一遍の質問からスタートし、アナタの返答によって審査員がそれを深めた質問をしてくると思います。
返答に正解不正解はありません。

お互いの対話の中で、審査員は、受験者の人柄や社会常識、そして人間的な魅力を見つけようとしています。
これから一緒に仕事をしていける、仲間になれるかどうか?
この辺りは、普通の会社の面接試験とそれほど変わらないと思います。
ただし、立ち居振る舞い、姿勢はチェックされます。
面接そのものは、こんなこと言ったらヤバいかもなどと思わず、これは訓練、俳優になるためのまあ素振りみたいなものだと、気軽に笑顔で受けてください。
不合格は予定された事
ここまで、オーディションのしっかりした受け方を書いてきました。
そして、結果は「残念ながら不採用」というお知らせが届きます。
それでいいのです。
オーディションをちゃんと受けて、ちゃんと落ちることが、一流の俳優になるための、訓練過程なのです。
経験も少ないのに、間違って合格し、デビューして、それっきりという俳優を何人も見てきました。
焦らないでください、俳優は一生の仕事です。
いえ、一生かかっても俳優として完成することが無い仕事かもしれません。
でも、それだけやり甲斐のある素晴らしい仕事です。

どうぞオーディションは受かればそれはそれでいいのですが、そのことだけを目的にしないで、もっと、もっと大きく、オーディションは自分の俳優人生の糧になる修行の場で、この場数を踏んで俳優として大成していく事を信じて、何度も何度も受けて落ちてください。
野球の選手が何度も何度もバットで素振りをするのと同じです。
オーディションを甘く見ないで、しっかり準備して、しっかり受けて、しっかり落ちてを何度も何度も繰り返して、精神力も演技力も磨かれていくものです。
新国立劇場元プロデューサー
中島豊
おまけ
審査員をやっていると「この俳優はいいね」と思う俳優は、審査員が5人いたら全員がいいと感じています。
ところが、4人がこの俳優はどうも違うな、と思う俳優を残りの1人が強烈にいい!という場合が、たまにあります。
そうなると話し合いが行われ、審査員5人の中の力関係が微妙に働きながら、ほとんどがその1人が折れて、不合格となります。

不合格を出した4人のうち、1人が「うむ、もしかしたら、面白いかも」とか「案外化けるかも」などと言って、合格に回ると最終的に合格となるケースが多くあります。
特筆すべきは、10年後、満場一致合格の俳優は、そこそこの俳優になっていますが、最初はみんなが「ちょっと違う」と思った俳優が、面白くて引っ張りだこの俳優になっています。
オーディションはその瞬間のことであって、俳優の価値や面白さを保証するものではありません。
では、具体的にオーディションを受ける前にやっておくべきチェックをお話しします。
情報の取り方 所属タレントを確認 入所金の有無 危険な会社
自分のタイプを見極める
新人オーディションと出演者オーディションの違い
ほとんどが落ちます
その後、スターになった人でも何度も落ちています。
井上ひさし、鈴木忠志、つかこうへい、野田秀樹、栗山民也、鵜山仁、ジョン・ケアードなどと一緒に選びました。
応募書類の書き方
字が丁寧な人物を選びます
共同作業を行う上での人物評価
写真
スナップではダメ、あなたの商品カタログ、ベストショット
特技
映画、テレビ、舞台で生きる特技、ダンス、歌、殺陣、武道、アクロバット(火吹き)、乗馬、水泳など
歌 プロ並み
ダンス プロ並み リズム感
声 明確さ、響き、何種類か
記憶に残る俳優 面白さ 珍しさ が残りやすいが
先まで残るのは演技のうまさ
四谷怪談
様々な感情で生きている
人物の性格から生まれる感情表現
意表をつく
選ばれた人物
3、「オーディションを受ける」ですが、このオーディションがいつあるか?
という連絡は劇団か俳優プロダクションにしかいかないのがほとんどです。
真剣に選びたいと思えば、大抵、プロが所属する団体にだけお知らせします。
ごく稀に、新聞、雑誌、ネットなどで募集がありますが、大抵は応募して書類審査などで落ちた人が、どんな人が受かったのか知りたくて、公演を観にくるのを狙った観客作りです。
ですから、合格者は大々的に宣伝して、落ちた人に知らせます。
肝心なのはやめないこと、続けること、生涯貧しくても俳優
確率はどんどん高くなる
うまさ、実力とは?
人間表現の匠
複雑な表現をする
心を隠す
自分でもわかっていない
3、プロダクションのマネージャーにスカウトされ、そこに所属しで仕事が来るのを待つ。
4、色々なオーディションを受けて合格する。
演劇のプロデューサーとして演出家や劇作家と一緒に、今度の作品はどんな出演者にしようか?
これが結構しんどい仕事で、何日も悩みながら、どうにかこうにか配役プランが決まったら、今度は俳優の所属事務所(プロダクションや劇団)に連絡をして、出演交渉に入ります。
そうやって、出演者を決定して行きました。
おそらく、今まで延べ2000人以上の俳優をキャスティングして来たと思います。
それ以外に、何度かオーディションを行い、まだ知らない、新しい俳優の発見という仕事もして来ました。