俳優でメシが食えるようになりたい! そういう俳優の卵、消えました!
俳優への道は、決して楽なことではありません。
しかし、しっかりとした地金としての知識、教養、体力、品性があればいつか必ず俳優として、世に出る事は確かです。
そして一番肝心なことは「辞めないこと、諦めないことです」
世に出るのが40代、50代の俳優もいます。
でも、そこから実に素晴らしい演技を見せて、多くの人々に感動を届けている、俳優はたくさんいます。
単に確率を考えても、20代には3000人近くいたライバルも、30代、40代と減っていきます。
私たちプロがキャスティングで苦労するのは、40代半ば以降の俳優です。
圧倒的に人数が少なくなっています。
遠藤憲一、滝藤賢一、佐藤二朗、吉田剛太郎、松重豊、小日向文世、など40代以降に世に出てきた名優たちです。
俳優の道は、人間を演じる匠の道です。それはあなたの一生を賭けるに相応しい仕事です。
それは人間を演じる事によって、人間の面白さ、素晴らしさ、愛おしさをあなたの全てを使って表現してください。
それが、単なる俳優としての演技を超え、大いなるニンゲン讃歌へとなった時、あなたの仕事が世界を変えるかもしれません。私はそれを願い、そんな表現者の出現を願っております。
劇団の養成所、あるいは俳優学校を卒業したり、大学の演劇サークルなどから俳優の道に進もうとしている人は、20代では男女合わせて6,000人以上いるのではないでしょうか?
私の経験でも、応募条件を18歳から30歳までと限定したオーディションに、男女合わせて2,000人を超える応募が常にありました。
そんな中から、どうやったらプロとしてデビューし、ギャラがもらえ、生涯活躍できる一流の俳優になれるのでしょうか?
今回は、俳優になるための王道をお話しいたします。
これからお話しするのは、俳優になって生活ができるようになるを、目指すことではありません。
「俳優でご飯が食べられるようになりたい!」
これを目指した俳優志望者はみんな消えました。
そんな低い目標ではなく、超一流の、日本一の俳優を目指してください。
超一流の俳優とは、己の身体と頭を使って、人間の深さや素晴らしさ、悲しさや愛おしさを表現する、人間造形の匠を目指す仕事です。
私たち、プロの現場は、皆さんの登場を待ち望んでいます!
俳優を志したら、どうすればいい?
もしあなたが高校生なら、まずは高校を卒業して、普通の大学か短大に進学してください。
学部はどこでも構いません、文学や経済、法律、社会学など勉強するのは大いに結構です。
或いは、日本大学芸術学部や桐朋学園短期大学などの演劇科に進むか、日本工学院や東京アナウンス学院などの芸術系の専門学校に進むでもいいかもしれませんが、私がいくつかの芸術系の学校で教えた経験で言うと、俳優を志望しているなら、普通の大学で学ぶことをお勧めします。
また、高校を卒業と同時に俳優の道に進む人や、高校を中退する人もいますが、よほど特殊な人、つまり子役で活躍していたとか、すでにモデルや歌手で活動している人などでなければ、大学卒業後、俳優養成機関で学んでも決して遅くはありませんし、俳優の世界では圧倒的に、普通の大学を卒業した人のほうが多いです。

大学進学を勧める意味
私の経験から、プロとして活躍する中でも、名優と言われる超一流の俳優には、皆ある資質を持っていました。
まず、例外なく努力家です。
そして、圧倒的に学力、特に国語力が高い人です。
その上で深い教養を身につけている大人でした。
俳優に必要なのは、戯曲やシナリオを読み込む力、確かな表現する為に必要な人間観察、その二つをベースにした自由闊達で豊かな演技力です。
俳優の仕事は頭と心と肉体をたくさん使いますが、特に頭が必要です。
間違えないでいただきたいのは、学力と学歴は異なります。
戯曲やシナリオの中に書かれている人間の心の底や、相手に対してどのような感情を持つとか、より優れた演技を追求する場合、この台本を読み込む力が絶対に必要です。
この読み込む力が、読解力と言われる「国語力」と「社会的教養」です。
将来、あなたがある映画やテレビ、舞台作品にキャスティングされたと思ってください。
その時に一緒に作品を作っていく共演者、監督、演出家たちとの会話は、徹底的に読み込んだ台本を基本に、この作品を現代社会において、上映(上演)する意味はどこにあるのか?
その為にどんな方向性を持った作品にして行くのか?
どんな登場人物像を作り上げるべきなのか?
自分の今の演技は、作品の方向性と合っているのか?
常に話し合いが行われています。
あるいは演出家なり監督は、台本を基にした演技指導や、ダメ出しという演技の修正を要求してきます。
一流の俳優は、その指摘や話し合いの内容を100%理解します。
その上で、要求された演技ができるか、できないかは、稽古すればいいのです。
でも、監督の言葉が理解できなければ、いくら稽古をしても要求されている演技ができるようにはなりません。
そういう意味で、超一流の俳優になるには高い読解力と、それを支える学力、高い教養が必要です。
正直に言いますと、読解力の無い俳優、社会常識が無い俳優、感性の無い俳優は消えていきます。
何も東京大学に行けと言っているわけではありません。
勿論、優秀と言われる大学を卒業している、素晴らしい俳優は大勢います。
しかし、無理して何年も浪人する必要はありません。
自分が普通に努力して行けるレベル、或いは行きたいと思う学校でいいのです。
問題は、その学校にいる間での過ごし方です。
4年間または2年間、出来るだけ深く本を読んでください。

できれば、シェイクスピアとかギリシャ悲劇、井上ひさし、別役実、つかこうへい、辺りの作品を1作品につき、最低3回、できれば5回は読んでください。
読書は量も必要ですが、俳優には深く読み込む力の方が大切です。
本の中で、自分がやってみたいと思う役、実際に自分に合っていると思う役、考えながら読んでください。
たくさん映画を見て、あらゆる種類の劇団の舞台を見て、そして社会の出来事にも関心を持ってください。
恋愛も大いに結構です、そしてできるだけ身体を鍛えておいてください。
何かスポーツに打ち込むのもいいでしょう。
お勧めは「ダンス」です。
将来、ミュージカルのオーディションやオファーが来た時、必要になります。
学生時代は、そうやって、一流の俳優になる為の、多くのことを学ぶ時間にしてください。
自分の頭と体と心を、一生懸命、耕す時期です。
頭だけでなく心、身体、感性を豊にする事を心がけてください。
これは頭の記憶と同じように、心の記憶がとても大切です。
一流の俳優とは、優れた頭脳と感性を持った人です。
私たち映画やテレビや舞台の業界人が常に望んでいたのは、しっかりとした考え方を持ち、努力し続けることができる超一流の俳優との出会いでした。
大学の4年間では足りないくらい、自分に対しての課題が出たと思います。
それで、いいのです。
あなたは、他の学生と違い、将来、超一流の俳優になる為の修行をしているからです。
俳優への3つの道
さて、いよいよ学校を卒業しました。
一流俳優を目指すのに必要な、最低限の教養と品格、そして体力も付いた状態です。
感性もだいぶ豊かになってきました。
楽しい恋も、辛い恋も経験しました。

さあ、本格的な俳優修行を開始しましょう。
普通の大学を卒業した人と、演技を学ぶ大学や専門学校を卒業した人とでは、若干の違いを感じるかもしれませんが、プロの目から見たら「全く変わりません」
プロデューサーや監督、演出家は若手俳優を「上手い、下手では見ません」
はっきり言って、1年、2年専門学校で習う事はアマチュアレベルです。
演劇関係の学校の学生で、一流の俳優はまだいません。
少し、上手いかもしれない程度の人はいますが、プロの現場では40歳、50歳、60歳のベテラン俳優が、必死に稽古をし、舞台を踏んでいます。
我々はそういう俳優と毎日仕事をしているので、多少、上手い俳優志望者がいても、我々が見ると初心者マークのヨチヨチ俳優です。
演技を学んで来た応募者は、多少、場慣れしている程度で、俳優としての可能性は、学生時代にしっかり自分を耕してきた人なのかは、面接の最初の1分ですぐわかります。
劇団やプロダクションは、成長の可能性を感じる志望者が欲しいのです。
それには、どれだけの身体能力と品性、そして学力と豊な感性の方が大事です。
我々は、オーディションや劇団入団の面接で、演技力はまず問題にしません。
それは、これから身につけてもらえればいいのです。
大事なのはあ、一流の俳優になると言う意志の強さと、その素養があるか?です。
学校を卒業した俳優志望者は、次の3つの進路のいづれかに進みプロを目指します。
1、大手劇団の養成所から劇団員になって、本公演にキャスティングされ、ギャラを貰う。
2、小劇団に入って、演劇活動を続けながら、ギャラが貰える外部の仕事が来るのを待つ。
3、大学や養成所の卒業生が、自分たちで劇団を作り、自主公演を続けながら、プロになって行く。
ではひとつ一つ説明をしていきます。
1、大手劇団の養成所から劇団員になって、本公演にキャスティングされる
大手劇団の所属とは、老舗新劇団を想定しております。
文学座とか民藝、青年座、青年劇場、俳優座、円、東京演劇アンサンブル、東演、テアトル・エコー、別格に劇団四季あたりです。
いずれも、俳優の養成機関を持っている劇団です。
ネットで検索すれば、かなりの数の俳優養成機関がヒットしますが、上部組織にしっかりとした劇団があり、活発な上演活動をしている所を選んでください。
養成所は主に毎年2月から3月に、劇団附属の俳優養成機関の入所試験を行います。
劇団によって若干異なりますが、試験内容はまず書類審査。
これは、劇団指定の応募用紙、もしくは通常の履歴書に写真を付けて提出します。
※この時、海で写した写真や街中でのスナップ写真、あるいは学園祭などでの扮装写真や、変なコスチュームを着た写真などを、願書に貼り付けて送ってくる応募者がいますが、100%書類審査で落ちます。
審査員が見たいのは、ノーマルな状態での本人の姿なのと、これから人生を賭けた入所試験を受けようとするのに、海でのスナップなどを送ってくる姿勢の者は、俳優として育たないと判断するからです。
さて、無事、書類審査を通ったら、本試験が劇団の稽古場や劇場などで行われます。
試験内容な、面接試験、台詞試験、歌、ダンス、自由表現です。
これを突破しますと、晴れて劇団付属の養成所への入所が許可されます。
※文学座の附属演劇研究所という名前の養成所は、歴代のスター、中村雅俊、松田優作、内野聖陽、角野卓造、桃井かおり、田中優子、などを排出し、競争率も相当高く、昼夜合わせて50人の募集に、500人以上の応募があるようです。
多くの養成所が、入所金と授業料合わせて、数十万円が必要となります。
※養成所によって違うが、入所金と合わせて、文学座や青年劇場は年間50万円から70万円程度、俳優座は2年制で1年次55万円、2年次30万円、青年劇場は年間12万と養成所によってかなりの違いがあります。
授業はそれぞれの養成所によって異なりますが、1日4から5時間、次のような授業が行われます。
ダンス、発声訓練、エチュードを基にした演技実習、座学です。
講師は劇団の俳優や演出家が勤め、授業は昼間か夜間となっているので、多くの養成所生がアルバイトをしています。それも劇団伝統のホテルの配膳人とか、昔から養成所生の事情をわかっているスナックとか居酒屋とか様々です。
授業のほかに、多ければ、年に3回、夏の小発表会、冬の小発表会、卒業公演と作品を上演します。
この時は、場合によって発表会直前の数日間は、一日中稽古をする場合があるので、融通のきくアルバイト先が必要となります。
この上演で、劇団の演出家や幹部俳優が、研究生の演技を見て、上位の研究機関に残すか、そのまま卒業させるかを判断します。
文学座などは昼間部と夜間部合わせて、50名程の養成所の生徒がいて、ひとつ上の養成機関に残れるのは3人から5人程度です。

上の養成機関に進んだ者は、劇団の本公演にチョイ役で出演したり、後輩の研究生の発表会の手助けなどを2年から3年やった後、劇団内部の審査で「準座員」となり「座員」へと昇格していきます。
では、そこまで辿り着かなかった人はどうしているのでしょう?
まず、養成所の試験に不合格だった人。
養成所によっていは、10倍以上の難関もあり、決して簡単ではないが、倍率の高さが自分にとって良い養成所とは限りません。
落ちても、それは自分が俳優として生きていく為の、成長過程のひとつであり、落ち込んだりせずに、すぐ別の養成所を選んで、受験してください。
また、運良く養成所の試験に合格し、1年間通ったが、次のステップ(上位養成機関)に進めなかった人。
これも当然ながら、別の養成機関の研究科(上位機関)の試験を受けて入るか、小さな劇団を探して入るか、いづれの方法で活動を続けていきます。
はっきり申し上げて、養成所の入所試験ほど当てにならないものはありません。
実際に合格者を選び、授業を始めてみると、どうしてこの人が合格してきたのだろう?
と、疑問を持たざるを得ない人物もいます。
もうひとつ業界の裏事情を申し上げますと、劇団はすでに劇団員として所属する俳優と同じような俳優は養成所段階で不合格にします。
出来るだけ、劇団に居ないキャラクター、もしくはキャラクターが似ていても、年齢的に離れている場合は合格にします。
あるいは、映画放送部の社員が見て、マスコミ的に売れそうなルックスだったりすると、映画放送部枠で合格させることもあります。
ですから、不合格は想定内とあまり気にせず、次へチャレンジしてください。
不合格者が、別の劇団の養成所に入って頭角を表し、一流の俳優になった例をいくつも観てきました。
現在活躍するスターの中にも、2度、3度劇団の試験に落ちた人もたくさんいます。
また、上位機関に残れず、別の養成所を数年の間、渡り歩く人も居て、養成所の生徒の間で知り合いがたくさんいると言う人もいました。
それもどうかとは思うのですが、そこから一流の俳優になっていった人もたくさんいます。
全く、いつどうなるのか分からないのが俳優の道です。
でも正しい努力は必ず報われます。
合格したら、その養成所での授業や課題を、真剣に取り組んでください。
そうやって、じっとチャンスを待つか、2,の道を考えてみる事も必要です。
2、小劇場に入って、活動を続けながら、プロの仕事が来るのを待つ
これは、大学卒業後、大手の劇団の養成所から活動をスタートするのではなく、小劇場と呼ばれる劇団員30名以下の小さな劇団から始めることです。
あるいは養成機関を1年で終了し、上位養成機関に残れなかった人が選択する道でもあります。
厳密に30人以下ということではありませんが、それほどの規模の劇団ではありません。
小さいながらも養成機関を持つ劇団もありますが、大手の劇団養成所が学校のようなマス的な授業に比べ、私塾的な要素の養成機関です。
しかし、そのほとんどが養成機関を持たず、公演活動あるいはそのための稽古が、そのまま養成と考えられているからです。
ある意味、実戦的です。

小劇団からは、大手劇団に負けず劣らず、多くの実力のある俳優が育っています。
かつて六本木にあった「オンシアター自由劇場」という小劇団は、串田和美、笹野高史、吉田日出子という俳優が中心となって作られた劇団で、余貴美子や小日向文世がその出身です。
さらに「夢の遊民社」からは段田安則、「大人計画」から阿部サダヲ、「劇団300」から渡辺えり、などの人気俳優が排出されています。
古くは「つかこうへい事務所」から風間杜夫、平田満、「東京乾電池 」から柄本明など多彩な才能が生まれています。
特徴的なのは、ひとりの劇作家や演出家、あるいはその両方を兼ねたリーダーが居て、そのリーダーの戯曲や演出作品を中心に上演するということです。
1970年代初頭までは、大手の新劇団出身の俳優でなければ、なかなか映画やテレビなどに出演するチャンスはありませんでしたが、1970年代後期あたりから、映画、テレビ、演劇も広く才能を探し、活発な活動をする小劇場の俳優を多く起用するようになりました。
※特に「山田洋次」監督などは、話題になっている小劇団やその俳優をこまめに見ております。
縁あって、山田監督にその理由を尋ねたところ「いい俳優を探している」という返事でした。
「魅力的な俳優は舞台にたくさんいてね」
具体的なお名前をお聞きした時に「自由劇場の笹野高史くん」とおっしゃいました。
自由劇場は客席数100の小さな劇場を拠点した、小劇団でした。
笹野高史さんは多くの山田洋次作品にご出演なさっています。
それらの俳優も現在60代から70代になっており、小劇団出身者と大手新劇団出身者との差は、なくなっております。
ただ小劇団と言っても玉石混合、劇団と名がつく集団は都内でも200以上あるのでは?と思われるほど、あちらこちらにあります。
そして、アマチュア劇団とプロ劇団の差がほとんど分かりません。
ほんの数劇団を除き、出演料はありません。
1ヶ月に及ぶ稽古期間中と本番中は、アルバイトもできませんので、普段からの貯金や実家暮らしが必須です。
さらに、劇団維持の為の出資金が必要な事もあります。
いつ終わるかわからない、そんな暮らしがここから続きます。
3年なのか、5年なのか、10年なのか?
それでも皆、頑張って年1回か2回の定期公演を行っています。
※この定期公演を行なっていない劇団は、候補から外してください。
残念ながら、あなたがそこで俳優として力をつける場所ではありません。
もっというと、プロを志向していると言いながら、その力がない集団です。
公演に出演することが、あなたの唯一の宣伝になり、俳優修行の道です。
では、どのような小劇団を選ぶのか?
まず、下北沢のザ・スズナリ、赤坂REDシアター、両国のシアターX、新宿・紀伊國屋ホールあたりで上演している劇団をいくつか探してください。
次にその劇団の芝居を見て、その作品が自分に合うとか、少なくとも嫌いではないというモノを見つけてください。
そして、その劇団の年間上演回数をネットとか、電話で直接聞いて確認してください。
少なくとも、1年に2回以上の公演を、1回公演あたり5回以上の上演数を実行している集団を選びます。
次にここが一番大事ですが、「演劇ぶっく」や「シアターガイド」、或いは「朝日新聞」、「読売新聞」、
「日本経済新聞」などの劇評で取り上げられたことがあるか?
調べてください。
どうやって?
ネット社会ですので、ネットで調べるか?
直接、劇団に連絡を取って「劇評を読みたいが、どうすればいいですか?」と直接、聞いてみることです。
劇団の対応や事務能力もわかると思います。
そうやって、探し当てた劇団は、古い手法ですが、直接、交渉です。
その時に、今まで自分が俳優になるためにやっていた事や、その劇団に入りたい為に、舞台を見たり、作家の戯曲を読んだり、劇評を調べたり、どんな事をしてきたかしっかりとレポートにまとめ、自分のプロフィール(俳優としてのカタログ)を添えて渡してください。
それで、断られたら、その理由を納得いくまで聞いてください。
はっきり言って、納得できる理由などありません。
あなたと会った劇団の人は、自分の判断であなたを劇団に入れて、もし、人間的に変な人だったり、集団に迷惑をかけたりした、らその責任を自分が取るのは嫌だな。
といった程度のことです。
そういう時は、相手が自分集団に対して
「試用期間で3ヶ月してダメなら、首にしていただいても構いません、と言っているから」
と云うような、言い訳できるような言葉を添えてください。
それでもダメなら、一旦引いて、その後、少なくとも3回は挑戦してみてください。
それでもダメなら、その劇団はあなたが行かない方がいいという事です。
別の劇団を探してください。
但し「簡単に芸能界で仕事ができます」とか「すぐデビューできます」みたいな宣伝をしているところは要注意です。
レッスン料だけ取って、ほんの少し、しかもかなりいい加減なレッスンで、いつまで経ってもそれ以上の事はありません。
あったとしても、ちょっと映画やテレビに通行人役のエキストラで出演するくがせいぜいです。
はっきり言って、映画、テレビ、演劇のプロデューサーは、そういう所にいる俳優を、プロとは認めていません。
業界用語で「トラ」と言って、エキストラの意味で、通行人とかその他大勢の群衆くらいでしがお願いしません。
3、大学や養成所の卒業生が、自分たちで劇団を作り、自主公演を続けながら、プロになって行く。
現在、元気に演劇活動をする多くが、学生演劇や演劇学校卒業生たちが集まって作った集団で、都内の100人程度の劇場を借りて、エネルギッシュな作品を上演し人気を集めています。
2、で紹介したように、そういう劇団を探して飛び込むも良し、また、自分たちで作るも良しです。
その際に必要なのは、ただ集まって作っても、面白い作品を上演しなければ、すぐダメになります。
最初から観客など集まるわけはありません。
ですから最初は、友達や知り合いに頼んできてもらいます。
最初の公演、いわば旗揚げ公演には100人位来てくれれば上出来です。
劇場の大きさは50人から100人入る程度で、3回公演くらいでしょう。
そこで上演したものが面白ければ、また次も来てくれます。
そうやって、少なくとも5回から10回くらい続けて、徐々に観客も増え、1000人を超えられるかどうかが、その劇団の分かれ道です。
1000人に到達すれば、2000人、3000人と増えていきます。
そうすると、面白い劇団があるらしいと、アンテナを張っているテレビや演劇のプロデューサーが見に来て、すぐには無理でも1、2年の内に出演の依頼が来ます。

映画、テレビ、演劇の現場は常に新しい才能を探しています。
その網にかかるには、最低でも3000人程度の観客動員をしている劇団になっている事です。
将来性のある、小さな劇団の要素
古くは「つかこうへい事務所」「夢の遊眠社」「第三舞台」「東京サンシャインボーイズ」「大人計画」
「扉座」「チームNACS」などが有名ですが、いずれも共通点として、才能ある劇作家兼演出家、「チームNACS」の場合は俳優が中心となって、創作活動をスタートさせ、徐々に人気を得て観客動員を増やしていった集団です。
中心にいたのが「つかこうへい」「野田秀樹」「鴻上尚史」「三谷幸喜」「宮藤官九郎」「横内謙介」そして「チームNACS」には大泉洋、安田顕など才能ある俳優がいました。
現在でも「イキウメ」「柿喰う客」「サブイボ群舞・アマヤドリ」「燐光郡」など、若者の人気を得ている集団も多くあり、これからもいろいろ魅力ある集団が生まれてくるでしょう。
そのような集団を自分で作るも良し、あるいは自分が心から面白いと思って参加したい集団を見つけるも良し。
肝心なことは、いい才能と結びつく事です。
その為にには、せっせと出掛けて、さまざまな作品を見て、これはと思う才能と出会う事です。
才能はひとりでは開花しません、あなたと出会うことで双方が開花していくのです。
2025年1月
中島豊
おまけ
現場のプロデューサー、舞台演出家、或いは劇作家、知り合いの映画プロデューサーや監督などが集まると必ず、
「どこかにいい俳優いない?」とか「平田オリザの青年団に面白い女優が出たらしいよ」
「この間、新国立劇場見た時に、○○っていう俳優がなかなか面白かったよ」
などと情報交換が行われます。

「これ飲んだら行くよ、行くってば」
数人の名前が上がる時と、全く上がらない時があります。
そういう時はいつも
「なんでいないんだろうねぇ」
「チャンネル変えても、おんじ出演者で回してるよな」
「世の中、昔に比べて夢が描けないのかね?」
「そういえば、今年の文学座研究所の応募者数、過去最低だったって」
とか言いながら、ビールを飲んでます。
でも、このままじゃ不味いよね、ビールは美味いけど‥
って愚痴をこぼしながら、みんなで飲んでます。
現場は若い才能に飢えてます。