舞台スタッフ・演出部のギャラ(賃金)と算出方法

主に舞台上で働く、舞台スタッフと言っても、幾つかの種類があります。
能や歌舞伎などの伝統芸能のスタッフ、これ結構ご祝儀や心付けがあったりしました。

それから、人気ミュージシャンの武道館コンサートなんかをやるスタッフ、これは大変ですが、結構、高い給金がもらえます。

それから、ジャンルとしては、演劇の演出部スタッフと大道具スタッフなどがあります。

どれも共通していることが多々あり、日本舞踊の舞台スタッフが、翌日にはユーミンのコンサートスタッフをやり、1週間後には新劇の舞台監督をやったりすることもあります。

業界的には常に人手不足という事情もあり、1人のスタッフがマルチに仕事をしている状態です。

今回は、その中でも基本と思われる、現代演劇の演出部スタッフに関しての、所属する団体と、ギャラと呼ばれる賃金を紹介してみたいと思います。

舞台大道具と舞台演出部の違い

舞台の大道具スタッフと演出部スタッフは、両者とも本番中は黒い作業着を着ているので、なかなか違いが分かりづらいです。

簡単に言うと、大道具スタッフは舞台に大道具を立てて、一幕と二幕で場面が変わったりする場合は休憩中、芝居の最中に場面を変える場合は舞台が暗くなる、暗転という時間に大道具を変えて、次の場面を作る仕事が中心に行われます。

ですから、大道具スタッフの仕事はほとんどが、劇場内で行われております。

対して演出部とは、稽古が始まる前から、台本に書かれている時代や、その時代の小道具、あるいは衣装、風俗などを調べ、作品作りの為の様々な文献や写真、動画データを集めます

そして、稽古が始まると、稽古進行を助けながら、稽古に必要な小道具や衣装を集めたり、世の中に既製品としてない小道具(登場人物の手紙、綺麗に飛ぶ蛍など)が必要になれば、製作したりいたします。

その他、舞台装置のプランの手助け舞台図面の作成、演出家の演出意図に沿った、舞台上の仕掛け(一瞬で消える花瓶、舞台奥を通過する巨大な魚など)を考えたりします。

稽古中、何度も行われる演出部のミーティング

幕が開くと、今度は本番中の俳優の舞台への出入りの手助けや、場面ごとの細かな変化、例えば前景の朝食の場面で使った、食器類やパンなどを、次の昼過ぎの場面に変えるとか、暗転中に小道具の交換やテーブルや机などの配置転換をしたりいたします。

時には俳優の体調のチェックや舞台上の安全管理にも目を配っています。
作業そのものは、技術的な物ですが、そのベースにあるのが創造的なものです。

演出部スタッフの所属先

演出部スタッフは、ほとんどが次のような形態で仕事を請け負っています。

A、劇団の演出部に所属し、主に劇団の公演のスタッフとして仕事をし、劇団の公演がない時は、他の公演や稽古の仕事をしている。

B、スタッフ会社に所属し、そこが劇団や劇場、あるいはプロデュース会社などから、舞台演出部の依頼を受け、社員として仕事をする。

C、フリーのスタッフとして、個人的に仕事を受ける。
  個人的に受けると言っても、仕事そのものはチームでやるので、そこに参加していく。
基本的には、舞台監督が演出部スタッフのチームし、そこに呼ばれることが多い。

またこの所属は、固定したものではなく、Aの劇団所属の人が、数年後にCのフリーになったり、自分たちでスタッフ会社を作り、Bになったりします。

また、舞台スタッフの業界も、慢性的に人手不足で、新人の場合でも仕事が途切れることはありません。
途切れる事があるとすれば、人間的に問題がある人で。これはどこの世界でも同じかと思います。

 本邦初公開!スタッフのランクと基準額

ギャラ(賃金)関しては、概ね、以下がランクのモデルケースである。

特)舞台監督クラス=経験10年以上、客席数1,000以上の大ホールで舞台監督経験あり。
基本1ステージ  30,000円

A)演出部チーフ=経験10年以下 舞台監督の右腕として、演出部チームをまとめ、技術的には舞台図面作成などが出来、異なる劇場でも同一の舞台装置等を組みげるプランが作れるレベル。
基本1ステージ  22,000円

B)演出部Bクラス・スタッフ=経験6年以下、一通りの、大道具担当、小道具担当、衣装担当などの演出部経験があり、稽古から本番、旅公演の経験を持つ
基本1ステージ  18,000円

C)演出部Cクラス・スタッフ=経験3年以下、稽古、本番、旅公演の経験あり。演出部の担当は大道具担当、小道具担当、衣装担当などの助手の経験あり。
基本1ステージ  15,000円

D)演出部Dクラス=経験1年以下=1作品ないし2作品程度の、演出部助手経験あり
基本1ステージ 12,000円

E)演出部Eクラス=経験なし 新人
基本1ステージ  9,000円

但し、上記の金額は、所属劇団、所属スタッフ会社、フリーなのかによって、若干の違いはあります。
劇団所属の場合は、自分の劇団の仕事をする場合は、金額が上の金額より少ない(遥かに少ない)場合があります。

というか、少ないです!

また、スタッフ会社の人は、スタッフ会社からマネージメント料を引かれる場合があります。
というか、5%から10%引かれます。

で、フリーの人は特に引かれませんが、フリーの人が、スタッフ会社からの依頼で仕事を引き受けた場合は、手数料の支払いが発生する場合があります。

ギャラ(給金)計算方法

スタッフのギャラの計算方法は、いくつかありますが、私が実際に行っていたのは下記の計算方法です。

 まず、基本料金を設定いたします。

A、1ステージ=基本料金×1倍
  本番1ステージのみの日

B、舞台稽古・1日2ステージ・仕込みバラシ=基本料金×1.7倍
  舞台稽古の日、1日に昼夜公演の2ステージある日、
  旅公演などの1日の内に仕込み、本番、バラシがある日

C、稽古期間・地方公演の本番のない日=基本料金×0.7倍
  稽古日 移動日 空き日

これに前記のランクによる、金額を当てはめて計算していきます。

具体的な試算例

では、今まで提示した数字を元に、サンプル計算をしてみましょう。

ここに、35日間の稽古舞台稽古3日本番の1ステージが10日 2ステージが5日の東京公演の仕事を引き受けたとします。

今回は旅公演に行かなかったとします。
ちなみに、旅公演は1日に仕込み、本番、バラシを行った場合は、1ステージ×2の金額をお支払いし、
4日間公演の場合は、初日に基本の1.7倍、2日目、3日目は基本料金の1、最終日は本番とバラシで1.7倍お支払いします。

東京公演の千秋楽は、本番とバラシがあるので、計算方法のBを当てます
したがって、本番1ステージ10回の内、1回は2ステージ分の計算とするため、便宜的に1ステージを9回、2ステージを6回といたします。

舞台監督の場合
No.1、稽古手当
30,000円×稽古35日間×0.7=735,000円

No.2、舞台稽古や最終日のバラシ
30,000円×(舞台稽古×3日×1.7)+(最終日の本番+バラシ×1.7)=204,000円

No.3、1日1ステージ公演
30,000円×9日間=270,000円

No.4、1日2ステージ公演
30,000円×5日間×1.7=255,000円

合計支払額 No.1+No.2+No.3+No.4=1,464,000円
消費税                  146,400円
支払い総合計               1,610,400円

となります。
約2ヶ月の拘束でこの金額、月額にしますと805,200円となります。
おそらく現在、この金額は演出部スタッフの最高額と思われます。

この金額で1年間、全く休まず仕事をすれば年収10,000万円弱ですが、
実際には、仕事と仕事の間にスケジュールが空く場合もありますし、
Aという作品で、舞台監督をした人が、常に舞台監督をしているわけではなく、Bという作品では演出部チーフ、またCという作品では本番までの稽古期間だけの仕事とか様々です。
ですからこのクラス人で、年収はだいたい600万円から700万円台と思われます。

もちろん、これが全てではありません。
公演の入場料や観客動員の見込み数などで、変化はしますが、
平均より少し高めだと思いますが、私が現役時代に支払っていた計算方法です。

これが、旅公演がある、しかも3ヶ月で100ステージ近くなどの場合は、単価が少し安くなる傾向があります。

上の単価が少し高いのは、2ヶ月拘束で終わりだからです。
スタッフにしてみれば、多少、単価が安くても5ヶ月、6ヶ月仕事がある方がありがたいので、
2ヶ月と5ヶ月の二つの公演の依頼が同時に来た場合、5ヶ月を選ぶのが普通です。
ですから、少し高めに設定していました。

舞台監督以下のスタッフも同じように、基本額のところに、演出部A、B、C、D、Eの数字を代入すれば、それぞれに支払いう金額がわかります。

ちなみに、細かい計算式を省いて総支払額だけ出しますと、以下の通りになります。

演出部チーフクラス  小計1,073,600円 消費税=107,360円 合計=1,180,960円 月額=590,480円
(基本=22,000円)

演出部Bクラス    小計878,400円  消費税=87,840円 合計=966,240円   月額=483,120円
(基本=18,000円)

演出部Cクラス    小計732,000円  消費税=73,200円 合計=805,200円  月額=402,600円
(基本=15,000円)

演出部Dクラス    小計585,600円  消費税=58,560円   合計=644,160円 月額=322,080円
(基本=12,000円)

演出部Eクラス    小計439,200円   消費税=43,920円  合計=483,120円 月額=241,560円
(基本=9,000円)

年収は、仕事の内容やスケジュールの調整、次第ですが、この月額の10倍程度と考えて良いと思われます。

一見すると、それなりの金額ですが、ここから10%の源泉税が引かれます。
この源泉税に関しては、翌年2月から3月の確定申告の内容次第では、何割かが還付金として戻ってきます。

また、ほとんどの演出部スタッフは、支払われた金額から、国民健康保険、国民年金などを支払うため、実際に使える金額は、ここから保険や年金を引いたものと考えた方が良いでしょう。

総括

舞台演出部スタッフは、戯曲の文芸的な解釈を作品作りの土台にし、その具体化を俳優や他の部門のスタッフ、照明、音響、衣装、美術、床山等と、協力し主に稽古場と舞台上で仕事をする人材です。

私の経験からも、演出部で接した人たちは皆インテリの人たちでした。
特に戯曲解釈の国語力が必要です。

賃金に関しては、決して高いとは言えませんが「演劇ではメシを食えない」と言われる範疇ではないと思います。

さらに私がプロデューサー時代には、正直、やや高めの賃金を払っていたと思いますが、それは私は「モノよりヒト」を仕事の上での信条としていました。

大道具の一部をカットしても、人件費をカットしないようにしていました。

どの芸術でもそうでしょうが、特に舞台芸術は人間と人間が織りなす芸術ですので、できる限り、創造活動を実践する人材に敬意を払っておりました。

それがプロデューサーの基本姿勢だと今でも考えております。



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